市原の地で鷹がつなぐ、日本とUAEの伝統
2024年5月。私たちは広がる田畑を車の窓ごしに眺めながら、市原の田園地帯を走っていました。 これまで日本とUAE(アラブ首長国連邦)が鷹匠交流プログラムを通して積極的に行われていた交流を、今回は市原の地で実現させるために、鷹を飛ばせる条件が揃った場所を探し、許可を頂くことが最初の一歩となるからです。 オープンロードは3日に渡るプログラムと交流がつつがなく行えるよう、企画から実施までをプロデュースしました。 談・小川起生/文・Mizuki Taniguchi/監修・Chisato Aoyagi
UAEと鷹狩の深いつながり
鷹匠・鷹狩という言葉に馴染みのない方も多いと思います。
鷹狩りとは鷹を山や野に放って行う狩猟の一種です。そして鷹匠とは、その狩猟に使う鷹を飼育・訓練し、操ることを職業とする人のことです。
人と共に狩りをするその文化は、国や時代を超えて語り継がれてきました。古くは仁徳天皇の時代より、日本には鷹を飼い慣らし狩猟を行う専門の役職が存在し、戦国武将たちの間では鷹狩は武士のたしなみとされてきました。その歴史は実に1600年以上といわれています。

日本独自の放鷹術は、現代にも確かに受け継がれています。そんな日本の鷹狩文化のルーツは、大陸にあると言われています。そして現在、世界で最も鷹との関係が深い国のひとつが、アラブ首長国連邦(UAE)です。UAEでは、鷹は家族のように尊重され、野生鷹の保護にも年間2700ドル以上が投じられるなど、国家レベルでの保護と支援が行われています。

本交流は、そのUAEから Emirates Falconers’ Club の鷹匠やその生徒等11名を日本にお招きし、日本の古式放鷹の継承者である 諏訪流放鷹保存会の指導のもと、両国の鷹狩文化交流を支援する一般財団法人INPEX JODCO財団、さらに中東文化を支える G-BIZ EAST(ハラールフードの卸販売) の協力を得て、国と文化、そして“鷹”を軸にした特別なプログラムです。

オープンロードは、会場探しや来日したUAEの方々が宿泊するグランピング施設への交渉、UAEの方々のためのハラールフードの手配、ムサッラー(お祈りの場所)の提供など、来日した皆さんが安心して過ごせるようにさまざまな視点から文化を理解し、相手の国への敬意を深めながら調整を進めました。
難航する会場探し
このプロジェクトの中で、特に難航したのは鷹狩の会場に適した土地を探すことでした。
実技を行うには、最低でも一平方キロメートルほどの広さが必要になります。遊閑地や田畑、さらにはゴルフ場まで視野に入れながら候補地を絞っていきましたが、鷹を飛ばすとなると、さまざまな課題が立ちはだかります。

広さや安全性といった条件を満たす場所を見つけること自体が容易ではありませんし、ようやく適した場所を見つけたとしても今度は借用の許可を得るのが難しい場合もあります。
粘り強く調整を重ね、無事に3ヶ所の会場を確保し、本番を迎えることができました。
2025年2月9日、いよいよ鷹狩りを含めた三日間に渡る交流プログラムが始まります。UAEの皆さんが長旅を経て日本へ到着したあと、今回のメインの宿泊施設となる高滝湖グランピングリゾートへと案内します。

千葉の自然と冬の澄んだ空気の中、諏訪流放鷹保存会の皆さんをはじめとする日本側の鷹狩りに関わる皆さんと合流し、そこで座学や体験実習を通して交流します。
最初は少し緊張した様子の生徒さんたちでしたが、アイスブレイクタイムを経て翌日の実技の陣形確認を行う頃には和やかな雰囲気になり、私たちも嬉しい気持ちになりました。




すっかり打ち解けた後には、皆で食事を囲む時間が待っています。
イスラムの文化圏で暮らすUAEの皆さんは私たち日本人とは違う意識のもと食事をいただきます。同じ食卓を囲い、互いの文化を尊重し合う貴重な時間です。






今回、UAEからのお客様をお迎えするにあたり、高滝湖グランピングリゾートさんは、異なる文化や宗教背景を持つゲストに向けて、ハラールフードでの料理提供を実現してくださいました。

「許されたもの」を意味するハラールを得た食べ物だけを取り入れることは、彼らにとって大事な行いです。
そのハラール対応の食材の手配にご協力いただいたのは日本に暮らす中東文化圏の人々の食を支える G-BIZ EAST(ハラールフードの卸販売)さんです。
「せっかく来ていただくのだから、できる限りのおもてなしを」と、リゾートのスタッフの皆さんが真摯に取り組んでくださった姿がとても印象的でした。




空中で獲物を捉える一瞬の芸術
二日目は、この交流のメインイベントとなる、鷹狩りの実猟日です。
天候にも恵まれ、鷹も「早く空へ飛び立ちたい」と言わんばかりに、鷹匠の腕の上でそわそわと足を踏み鳴らしているようにみえます。
私たちも同じように、高揚感と共にその瞬間を待っていました。

グッと足を前に踏み込み、その動力を伝えるようなしなやかな動きで、鷹を空へと送り出します。その瞬間はとても美しいものでした。



















約3時間の実猟は2日間行われました。場所を変えると狩りの陣形なども再考しなければなりません。自然を相手に、鷹と心を通わせ狩りをする。まさに匠の技と言える「鷹匠」の奥深さと迫力は、国を超えて受け継いでいくべき技術と文化であると肌で感じることができる2日間となりました。
市原市における在留外国人の数は増え続けており、その数は千葉県内でも上位にランクインしています。今の時代の地域活性化には、地域に住むさまざまな国の方々との交流が不可欠です。また、さまざまな国の文化を学ぶことは、私たちの文化を再発見することにも繋がっていきます。
オープンロードでは、異なる文化背景を持つ人々が文化や思いを発信できる活動の場を用意し、地域の人々ともっと気軽に交流できる環境や雰囲気づくりに取り組んでいます。相手の文化を尊重しながら相互交流の素敵な時間を作り出すノウハウは、学校や企業における学びの場でも活かすことが可能です。
今回のような国際交流をはじめ、異文化交流イベントは、新しい世界の扉を開き、人の創造力や発想力を引き出すポテンシャルを秘めています。オープンロードとともに、まだ見ぬ体験を作り出してみませんか。企画のご相談等、お気軽にお問い合わせください。

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