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地域の“HUB”になる場所をつくりたい HUBプロジェクト

JR内房線と小湊鉄道が交わる五井駅の西口で、オープンロードが運営しているカフェ兼イベント&コワーキングスペース「Co-Saten」。なにを目的につくり、どのように運営しているのか。そして、将来に向けてどのような展望を持っているのかをお話しします。 談:小川起生 2020年6月17日/2022年1月更新

地域で活動する人たちをつなぐ場を。

オープンロードは、まちづくりを仕事にする会社として活動していますが、当然弊社だけでまちづくりができるとは思っていません。だからこそ、行政はもちろん、地域で様々な活動をしている人たちと協力して、まちをつくっていきたいと考えています。そこで、市内に点在している地域で活動をしている人たちがお互いに知り合い、つながっていくための「HUBプロジェクト」を始めました。

最初に考えていたことは、活動している人たちが集まる地域の“HUB”をつくること。しかもそれが行政ではなく、民間でつくれたら面白いことになるのではないか?と思い、そんな場づくりを構想していました。

そんな折、祖母が亡くなり、葬儀を行ったお寺のご住職に、五井駅西口の商店街シンコープラザの空き物件を紹介していただくご縁がありました。ただ、初めて物件を見学に行った時の正直な感想は、「これは絶望的だな……」というもの。以前に経営されていた飲食店が出ていったままの状態で、長年の汚れや傷みもひどく、ここでなにかを始めるのは厳しいなというのが、第一印象でした。

ですが、使われなくなった空き物件を再生し、地域の価値を高めていくことを学ぶ九州のリノベーションスクールで受講したことを思い出し、改めてシンコープラザの物件を見直すことで、最初に感じた絶望が、「ここでやっていけるかもしれない」という予感に変わっていきました。

昔はにぎわっていた商店街も、シャッターが目立つようになっていました。

伴走してくれる仲間

そんな中、いすみ市で行われたイベントで知り合ったのが、建築家の黒沢健一さんでした。黒澤さんは、市原の西国吉でkurosawa kawara-tenという建築事務所を経営し、地域で使われなくなった空き家を改修して自らの事務所やスタッフの寮にするというユニークな活動をしていました。

Co-Satenをつくるにあたって、かねてから、プロジェクトに伴走してくれる建築家を探していた僕は、「これは黒澤さんと一緒にやるしかないな」と直感し、すぐにオファーを出しました。さらに、黒澤さんに紹介いただいたグラフィックデザイナーの藤原さん(しなやかデザイン)や、オープンロードスタッフの右田仁輝などをメンバーとし、シンコープラザのボロボロの空き物件から「HUBプロジェクト」を始めることに決めたのです。

リノベーションをはじめた頃のCo-Saten。がらんどう状態!

つくりあげる過程も、地域の“交差点”に。

その後、五井会館や工事前の店舗に何度も集まって話し合いを重ね、みんなでウンウン唸りながら“Co-Saten”という名前や、いろんな人やコトが出会う『交差点をつくる』というプロジェクトのコンセプトを決めていきました。

そのコンセプトを踏まえ、内装工事もできるだけ多くの人に関わってもらい、つくりあげる過程自体も地域の“交差点”にしたいと考え、地域の人や大学生に手伝ってもらいながら、壁塗りや家具づくりなどに取り組みました。結果、通常であれば数週間で終わる工事に3ヶ月かかりましたが、それはCo-Satenとして、とても意味のある3ヶ月だったなと感じています。

使い慣れない道具で試行錯誤
ほんとうに、たくさんの方に手を貸していただきました!
完成したテーブル。みんなでつくった分、よく見れば粗さがあるのもひとつの味です。

商店街の昔の姿を、
現代版につくりなおしたい

物件を紹介してくれたご住職が、以前見せてくれた1枚の写真があります。それは、シンコープラザができたころのもので、魚屋、八百屋、眼鏡屋などがお店の外に商品を並べ、市場のように活気ある商店街の様子が写された写真でした。

今ではショッピングモールなどにお客が流れてしまい、シャッターが閉まったままのお店も多いシンコープラザ。かつて商店街にあったような八百屋や魚屋は、近所の人から必要とされなくなってしまったのかもしれません。ですが、今の時代に必要とされるお店や場所を新しくつくっていくことで、商店街を現代版にアップデートできるのではないかと考えています。

その最初の一歩として、Co-Satenのオープニングパーティーは、あえてCo-Satenの中ではなく、古い写真で見たようなお店の外、商店街の道をメインにしたパーティーにしたいと思い、企画。道にテーブルを出し、商店街の飲食店に食べ物を出してもらい、来場者が各店舗で好きな飲み物を買って飲んでもらうスタイルにしました。

その日は、地元の人はもちろん、商工会、市役所、市長など100人近くの人に集まっていただき、Co-Satenはスタートしたのです。(動画は、2019年1月15日に開催したオープニングセレモニーの様子)

まちづくり関係を中心に
年間80本程度のイベントを開催

その後、月10本のイベント開催を目標に運営を続け、2019年の1年間で、約80本のイベントを開催してきました。どのイベントも印象的ですが、その中から2つほど記憶に残っているものをご紹介させてください。

米沢の森を考える会

一つ目は、市原の各地で開かれている「米沢の森を考える会」のCo-Saten版。考える会代表の鶴岡清次さんに、山桜やコナラなどの巨樹・古木が残る自然林米沢の森についてお話しいただき、全3回にわたって行われました。イノシシ肉をいただきながら、活動の内容、森の課題など、年齢も職業も違う様々な立場の方々が考えを伝え合う穏やかな時間となりました。

イベントに合わせ、期間限定の森がCo-Satenに出現!

イベントの様子はこちら

まちの未来は『公園』から?

二つ目は、地域にとって大切な場所である公園について考える「まちの未来は『公園』から?」です。

これまで公園がどのように管理され、どのように使われてきたか、そして公園をもっと自由に使うためにはどうしたら良いのかについて、直近の公園法改正に携わった元国交省の公園緑地課長町田誠さんに語っていただきました。

この日は本当に多くの方に来場いただき、公園、そしてまちづくりへの関心の高い人がこの地域にたくさんいることを実感することができました。

Co-Satenが満員になるほど、多くの方にご参加いただきました。

イベントの様子はこちら

そのほかにもさまざまなイベントを開催し、多くの方と出会う“交差点”になりました。

いちはら“福業”スクール 新プロジェクト中間発表会/2020年2月22日(土)
音の交叉点vol.1「WAIWAI STEEL BAND」/2019年8月16日(金)

1周年記念イベント
『365日目 商店街が1つになる日』

2020年1月14日には、Co-Saten1周年を記念して『365日目 商店街が1つになる日』を開催しました。基本形式は1年前のオープニングパーティーと同じで、道にテーブルを出して各店舗から飲食を提供してもらうスタイル。しかし、形式は同じでも、2019年のときとはちょっと違うイベントになったように思っています。

まず飲食をするだけではなく、いくつかの企画も行いました。参加者に今年の抱負を習字で書いてもらったり、道に芝生を敷いたり、武田屋作庭店の武田眞幸さんに小さな庭をつくってもらったり、イベントの様子をネット配信するなど、1年間で鍛えられたCo-Satenの企画力を思う存分発揮して、よりみなさんに楽しんでいただける空間づくりにこだわりました。

セレモニーでの一枚。

また、商店街の他店舗との関係も大きく変わりました。Co-Satenをオープンした当初は、「一体なんの店なんだ?」と怪しまれていた僕らですが、この1年間で交流を続け、少しずつ理解をいただいたことで、1年前では考えられないような連携ができるようになったのです。

そして何より、参加者の雰囲気もだいぶ変わりました。1年間通して続けてきたイベントで地域の人同士もつながりが増えたことで、この日は、来場者同士のコミュニケーションも1年前より多く、また自然に会話が生まれていたように感じました。みなさんがイベントを楽しんでくれたようで、遅い時間まで笑い声が響いていたことが印象に残っています。

コロナ禍のその先、未来をみつめて

2020年6月現在、世界は新型コロナウイルスによって大きな苦境に立たされています。人が集まる交差点を目指し運営してきたCo-Satenについても、それは同じこと。人が集まれず、イベントができない状態となり、この場所を手放すことも一瞬頭によぎりました。ですが、1年間で生まれた数多くのCo-Satenの動き、ひいては市原の未来に向けた歩みをここで止めるという判断はありえません。

この状態が収束するまでは、オンライン/リアルイベントのハイブリッドを目指し、新しいCo-Satenののスタイルを模索していきます。そしていずれコロナウイルスがなんらかの形で克服されたその時にはまた、本来のCo-Satenの姿を取り戻したいと考えています。

さらに、その先のビジョンとして、Co-Satenを中心にさまざまな仕事をつくり、雇用を生むことをとおして、市原を若い人たちが楽しく暮らせるまちにしていきたいと考えています。すでにCo-Satenには大学を卒業したばかりの小深山徹さんや、オーストラリア留学から帰国した原麻里子さんが積極的に関わってくれているなど、少しずつ変化の手応えを感じ始めています。

また、Co-Satenは小さなお店ですが、ここで得た場を運営する経験を生かし、もっと大きな施設の運営に関わることも目指しています。例えば、公園や五井会館の有効活用など、より地域に強い変化を起こせるための準備として、ビジョンを描き、力を溜めています。これからのCo-Satenにもご期待ください!

本文に登場した関係者のみなさん(五十音順)

  • 黒沢健一さん

    株式会社kurosawa kawara-ten代表。1982年千葉県市原市生まれ。機能不全を起こしている地域が持続可能な状態をどうつくり出せるのかを追求しながら、建築と向き合っている。

  • 小深山徹一さん

    大学で市原市の都市計画について研究。地元牛久で商店街の活性化に取り組み、2018年秋に上総牛久駅で小湊鉄道のトロッコ列車の乗客に、商店街の飲食物を販売する出張牛久商店街を実施。小川氏、右田氏と共にCo-satenの運営の一員となる。

  • 武田眞幸さん

    武田屋作庭店。1985年市原市山田橋(現国分寺台中央)出身。少し前の時代ように、ごく自然に山野と共に生きていくには、どうしたら良いのか。次の世代、更にその次の世代にまで繋いでいくにはどうしたら良いのか。そのきっかけとなる庭をつくっていきたいと考えている。

  • 鶴岡清次さん

    市原米沢の森を考える会代表。

  • 原麻里子さん

    Co-SatenをHUBにし、地域の垣根や国境をこえて市原市に関わる人の循環をつくり出すプロジェクトを発案中。海外と地域をつなぐコミュニティーコーディネーター。

  • 町田誠さん

    千葉大学・横浜市立大学非常勤講師 SOWING WORKS 代表。直近の公園法改正に携わった元国交省の公園緑地課長。

  • 右田仁輝さん

    オープンロード合同会社所属 。1993年千葉県市原市島野出身。

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