「就職するなら、周りに言って恥ずかしくない会社がいい」

人材紹介会社グリーンカプセルコーポレーション株式会社社長の飯泉祐介さんと以前から交流があり、千葉市で彼らが運営するフリースペースGRECAP SATELLITEも時折訪れていました。GRECAP SATELLITEは、学生がコワーキングや勉強、就職相談などに無料で利用できる場所です。

そこに足を運び、学生と雑談をしている中で、どんな動機で就職先を選んでいるかを聞いたところ返ってきたのが、「周りに言って恥ずかしくない会社がいい」「親や友達が知っている会社がいい」と言った答え。「自分のやりたいこと」ではなく、「周りの人にどう思われるか」で就職先を選んでいると言うのが、とてもショックでした。それが1人や2人の意見ではなく、似たようなことを話す学生が数多くいたのです。

そういった大学生の就職にまつわる意識の裏には、大学側や企業側の問題があるように思います。まず、大学のキャリア指導は企業からの募集ありきで、大学にきた求人の中からしか、学生に応募する企業を選ばせることができません。そのため、就職活動は学生の内的な動機から始まるのではなく、あくまで求人リストをカタログのようにして、その中から選ぶものとして行われているのです。

もちろん、自己分析など学生の動機を考える指導もあるのですが、どうしても求人リストありきに陥りがちなため、学生と企業のミスマッチがなかなか減らせないという現実があります。

また企業側も、千葉の会社であっても説明会を都内の合同イベント会場で開催することが多く、せっかく千葉に多くの大学があるにも関わらず、その学生とうまく出会える場をつくれていないという問題があります。

そこで、千葉市内で千葉の企業と千葉の学生がコミュニケーションできる機会をつくれば、そうした就活のミスマッチを少しでも減らせるのではないかと考えたオープンロードと飯泉さんが立ち上げたのが「職カフェ」です。せっかくなら大学関係者も巻き込んでしまおうと、企業経営者・企業採用担当者・大学キャリア指導担当者・学生の4者が集まるイベントとして開催しました。

学生と大人が対等な立場でディスカッション

企業経営者・企業採用担当者・大学キャリア指導担当者・学生をまとめて7〜8人のグループに分け、その中で決められたテーマについてディスカッションを行い、最後に各グループがその内容を発表するという形式の「職カフェ」。毎回、SNSなどで募集した20人程度の学生が集まり、2019年の約1年間で4回開催しました。

そんな「職カフェ」の特徴は、学生と大人が対等な立場でディスカッションできるようなテーマを毎回設定しているところにあります。例えば、すでに何年も働いている大人でもすぐには答えられない『働いて幸せになるとはどういうことか？』というテーマ。そんなテーマを設定すると、学生から見たらだいぶ立派に見える大人が、働くことについて真剣に頭を悩ませます。そんな、普段は見られない大人の姿が、学生にとっては新鮮で面白く、刺激になるようでした。

また、『働くことの良い点・悪い点』についてディスカッションした時は、「残業が多くて大変そう」「上司が厳しそう」「ブラック企業が多そう」などなど、働くことのイメージを学生が想像で挙げていきましたが、それに対して、実感を大人が答えました。「残業が多くて大変」「上司が厳しくて辛い」……そんなネガティブな言葉が自分たちの口から出てきたことで、学生が想像している働くことに対するマイナスのイメージは、現実の大人が普段見せている姿を反映しているのだと気づき、「働くことの良い面を若い人たちに見せていかなければ」と襟を正す思いにもさせられました。

千葉で学んで、千葉で働く

「職カフェ」に参加した学生からは、「働くことに前向きになれた」「起業家と初めて会った」「楽しく働いている大人に会えたことで、働くって悪いことじゃないんだって思えた」などのポジティブな感想をたくさんもらいました。

千葉の大学生は、その多くが東京の会社に就職していきます。けれど、知られていないだけで、千葉にもたくさんの企業があります。その選択肢を可視化し、『千葉で学んで、千葉で働く』人を少しずつでも増やしていくことが、千葉の未来をより良くしていくのではないでしょうか。そんな未来に近づくために、グリーンカプセルコーポレーション×オープンロードで、今後も「職カフェ」を続けていきたいと考えています。

＊2020年に入ってから、新型コロナウイルスの影響で休止中